今回の記事はフォアハンドのスイング時におけるラケットダウンについていろいろ意見を述べていきたいと思います。
ちなみにですが、もともとラケットを横に寝かせた状態でテイクバックをするプレイヤーもいますよね。
なので今回はオーソドックスなスタイルのフォアハンドを打つのが前提で話します。
その中でテニス初心者に多いのが、スイングを「腕だけ」で行ってしまい、ラケットヘッドの落とし方=ラケットダウンがうまくできていないというケースです。
ラケットダウンがうまくできると、そこまで力を入れてないのに伸びのあるショットやスピンがかかりやすくなったりといいことづくめです。
・打球に伸びとスピードが出る
・安定したスピンがかかる
・フォームが自然で無理のないものに変わる
・ボールを自在にコントロールしやすくなる
・打点の位置が安定する
この記事でわかること
- フォアハンドでラケットダウンが重要な理由
- 正しいラケットダウンのタイミングと角度
- フォーム全体で見るラケットダウンの流れ
- 初心者がやりがちなラケットダウンのミス
- ラケットダウンを習得するための具体的な練習法
テニスコーチ歴18年、年間レッスン数は約1500回、試合での優勝経験もあります。
その中で、ラケットダウンができるようになった生徒さんたちは、例外なく**「球質が変わった!」**と実感しています。
「当てるだけのフォアハンド」から、「相手を押し込めるショット」へ。
この変化を最も簡単に、かつ効果的に起こすのがラケットダウンなんです。
フォアハンドにおけるラケットダウンの役割
ラケットダウンは、フォアハンドにおいて「スイングの加速」と「スピンを生み出す」ための重要な動きです。
具体的な役割は次の5つです。
ボールにトップスピンをかける為の前準備
ラケットダウンをすることで「下から上へ振り上げるスイング軌道」が作られ、自然に下から上に振り上げるスイング軌道が生まれます。自然とトップスピンがかかる準備が整います。
スピンをかけるには、ボールの下側から上方向にラケット面を通すことが必要です。
そのためには、ラケットが低い位置(ラケットダウン)からスタートして、上へ向かって振り抜く必要があります。
つまり、ラケットダウンはスピンの起点なんです。
ラケットを高い位置からそのまま水平や斜めにスイングしてしまうと、
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ボールがフラットになりがち
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回転がかからずオーバーする
-
安定しない
などのデメリットが起きます。
② 遠心力を最大化する
ラケットダウンをしっかり行うことで、スイングの半径(振り子運動)が大きくなり、遠心力が強くなるので、力を入れなくても球がよく飛ぶようになります。
遠心力とは、円を描くようにスイングしたときに発生する外向きの力のことです。
これはテニスでボールを強く・遠くに飛ばすときの「隠れた推進力」になります。
ラケットダウンでラケットヘッドが肩の高さよりグッと下に下がると、スイング軌道が自然と「円弧」になります。
この大きな円運動により、ラケットヘッドが加速して、
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より少ない力でボールが飛ぶ
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コントロールしやすくなる
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フォームが滑らかになる
というメリットが得られます。
③ スイングのリズムを整える
テイクバックからスイングへ「間(ま)」を作り、滑らかな動きとリズム感を生み出す役割があります。
これは、音楽でいう「タメ」や「呼吸」と同じ。
急がずにリズムよくスイングするための“自然な助走”なんです。
実は、プロ選手のスイングをスローモーションで見ると、必ずラケットダウンで一度ラケットが沈んでから、そこから一気にスイングしています。
この一瞬のタメが、実はスムーズな動きとパワーの源。
力みを防ぎ、脱力にもつながります。
リズムが悪いと
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スイングが「せかせか」してバタバタする
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インパクトが安定しない
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打点が毎回バラバラになる
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力みやすく疲れやすい
リズムが崩れると、打球が浮いたり、飛びすぎたり、ミスが増えてしまいます。
④ 打点を前にしやすくする
ラケットダウンを入れることで、ラケットヘッドが一度「後ろ下」に引かれ、その反動で前へと振り出されます。
この「下→前→上」の自然なスイング軌道が、前でボールをとらえるための“助走”になるんです。
打点が前にあると
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ボールに力が伝わりやすい
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コントロールしやすくなる
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スピンやスピードがのる
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フォロースルーがスムーズになる
逆に、打点が後ろになると、体が詰まり、ミスやケガの原因にもなってしまいます。
また、ラケットダウンがあると「スイングにタメができる」ので、自分が打ちたいポイントにラケットを持っていきやすくなる=タイミングも取りやすいです。
⑤ ケガ予防・疲労軽減
ラケットダウンで力を抜くタイミングが生まれることで、手打ちを防ぎ、肩や肘への負担が減ります。無理のないフォームを作る重要な役割です。
力を抜いたスイングは、筋肉の無駄な緊張を減らし、動きが滑らかになるため疲れにくいです。
長時間の練習や試合でも、疲れを感じにくく、パフォーマンスを維持しやすくなります。
フォアハンドでのラケットダウンの手順
ラケットを立てる(ラケットヘッドを上に向ける)
まずはラケットを構えた状態から、ラケットヘッドを垂直に近い「立てる」位置にセットします。
このとき、ラケットの面は地面と垂直に近く、ラケットのヘッド(上端)が上を向いている状態です。
この姿勢を作ることで、スイングの準備がしやすくなり、自然なラケットダウン動作につながります。
ラケットを体の横(右利きなら右側)にテイクバックする
ラケットを立てたまま、肘を軽く曲げて体の横に引きます。
このとき、肩の高さより少し下にラケットヘッドが来るように意識しましょう。
前腕を回外動作してラケットヘッドを下に落とす
前腕の回外(かいがい)動作とは、手のひらが上向きから外側に回る動きのことです。
この動きを使って、ラケットヘッドを自然に下方向へ落とします。
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ラケットを立てた状態から、肘を軽く曲げて前腕を外側に回すイメージで動かす
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手首や腕だけで無理に動かすのではなく、肩からの連動も意識する
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ラケットヘッドが肩よりも下の位置にゆっくり落ちるように操作する
-
動作は滑らかに、力まずリラックスして行うのがコツ
ラケットヘッドが落ちたら体の回転と共にスイングする
ラケットヘッドがしっかり落ちたら、いよいよスイング開始です!
ここで大事なのは、腕だけで振らないこと。必ず“体の回転”を使ってスイングすることがポイントです。
具体的なスイングの流れ
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ラケットダウンの位置から、下半身(特に右利きなら右腰)を前に回す
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腰と肩を回す動きに、ラケットが“自然についてくる”イメージでスイングする
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下から前に向かってラケットを振り上げていく(これでスピンがかかる)
なぜ体の回転が必要なの?
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腕だけで打つと、打球に力が伝わりにくい
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体幹を使った方が楽に強いボールが打てる
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腕への負担が減り、フォームが安定する
特に初心者の方は、「体をしっかり回す」「腕は振られるだけ」を意識するだけで、スイングがすごく良くなります。
フォアハンドでラケットダウンを究めると「球が走る」
脱力してラケットの重力を利用してラケットダウンをする
自分で“下げよう”とするのではなく、ラケットの重さで自然に下がるのを待つ。
ラケットは意外と重たい道具です。だからこそ、その重さ(重力)を味方にすることが大事。
無理に下げるのではなく、構えからテイクバック、そして自然に“ふわっ”と下がる瞬間を作ってあげましょう。
2. 前腕の力を抜いてラケットヘッドの重みで回外させる
前腕(ひじから手首まで)をゆるめて、ラケットヘッドの重みで自然に回外(外側にひねる動き)させる。
脱力ができていると、ラケットが勝手に「回外方向」に動いてくれます。
この動きがラケットダウンの自然なフォームを作り、スピンがかかりやすくなるんです。
3. 前腕が回外方向にひねり回される感じを意識する
脱力していると、ラケットヘッドの重みで前腕が“回外方向にねじられるような感覚”が生まれます。
この「ねじられる感じ」は、**スイングの準備動作としてとても大事な“タメ”**になります。
このとき無理に止めたりせず、ラケットと前腕の流れを感じることが重要です。
なぜこの動きが重要なの?
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ラケットダウンで生まれたタメ(エネルギー)を自然に解放できる
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遠心力を活かし、ラケットヘッドが加速する
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脱力したままスイングができるので、スピードと安定感が両立する
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フォームが滑らかになり、ケガの予防にもなる
4. 可動域限界近くまで回外された後の反動を利用してスイングを開始する
可動域の限界まで回外されると“反動”が起こります。それを利用して、前方にスイングを開始します。
感覚としてはゴムのようなイメージに近いですかね?
自分で頑張って振るのではなく、流れに乗って“振られる感覚”を使うのがコツ。
反動で戻ってきた腕は回内方向側に「少し元に戻す」くらいのつもりで十分
ラケットヘッドの重みで回外させられた前腕を、自然にニュートラルに戻す感覚でスイングすると、スイングスピードが楽に上がり、球が走ります。
※回内方向(いわゆるプロネーション)に回す意識が強すぎるとフレームショットになりやすいので技術が必要です。
イメージは、「腕を元の位置にポンと戻すだけ」
無理に力を入れない、「勝手に返ってくる動きに乗る」イメージです。
これが遠心力を最大限に活かしたスイングであり、いわゆる「球が走る」状態を生み出します。
ラケットダウンをマスターする練習法
ラケットの重さを感じる脱力素振り
ラケットヘッドの重さと、自然に下がる感覚を覚える。
やり方:
-
ラケットを軽く持ち、構えた状態からゆっくり素振りを繰り返す。
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ラケットダウンの時に、手首・腕・肩の力を極力抜く。
-
ラケットの重さで「勝手に下がる」動きを感じるまで続ける。
最初は超スローで初めて力を抜き、ゆったりした素振りを何度も繰り返して体に覚えこませましょう。
ラケットダウン確認壁打ち
ラケットダウンのタイミングを体に覚えさせる。
やり方:
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壁から約2〜3メートルの距離に立つ。
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一球ごとに「ラケットダウンをしっかり意識」して打つ。
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腕だけで振らず、ラケットヘッドをしっかり下げることを確認しながらゆっくり打つ。
打つ直前でラケットダウンをするタイミングを覚えて、フォーム確認のためにスマホで撮影すると効果倍増です。これもゆっくり打ちましょう。
【スローボール】球出しでゆっくりフォーム練習
実際のボールでも自然にラケットダウンを使えるようにする。
やり方:
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コーチや練習パートナーにスローボールを出してもらう。
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ラケットダウンをゆっくり意識しながら、脱力したままスイングする。
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最初は「遅く・浅く」でOK。慣れたら少しずつスイングスピードを上げる。
基本的には慣れるまでは“ゆっくり”が一番!速いボールは気にしないで、自分のリズムを大事にしよう
【3拍子ドリル】スイングリズム体得法
スイングのリズム(テイクバック → ラケットダウン → スイング)を身につける。
やり方:
「1・2・3」と声に出しながら素振り、もしくは球出し練習をする。
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1(テイクバック)
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2(ラケットダウン)
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3(スイング)
声を出しながら振ることで、無意識にリズムが取れるようになる。
何球も繰り返し反復練習することによってリズム感もよくなってきます。
【目隠し素振り】感覚を研ぎ澄ます脱力トレーニング
余計な力を抜き、身体の感覚でラケットダウンを覚える。
やり方:
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目を閉じたまま、ゆっくり素振りを繰り返す。
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ラケットの重さ、腕の脱力、前腕の回外を意識する。
※周囲に十分なスペースを確保してください。
この時にしっかりとラケット面がどこに向いてるのかを感じながら素振りしましょう。
練習一覧表
練習名 | 目的 | ポイント |
---|---|---|
脱力素振り | ラケットの重さを感じる | スローでゆったり |
ラケットダウン確認壁打ち | タイミングを覚える | 撮影しながら丁寧に |
球出しでフォーム練習 | 実戦で自然に使う | スローボールでOK |
3拍子ドリル | リズムを身体に染み込ませる | 声を出しながらやる |
目隠し素振り | 感覚を研ぎ澄ます | 周囲に注意して脱力に集中 |
フォアハンドはラケットダウンを習得すると球が走る!:まとめ
いかがでしたか?
この記事では「フォアハンドにおけるラケットダウンの重要性と実践方法」について、初心者の方にもわかりやすく解説してきました。
ラケットダウンの仕組みと練習方法を正しく知れば、力を抜いても自然とボールが伸び、回転がかかり、見違えるようなショットが打てるようになります。
本記事の内容まとめ(チェックリスト)
項目 | 内容 |
---|---|
ラケットダウンとは? | スイングの中でラケットヘッドを自然に下げる動作 |
なぜ重要? | ボールにスピンをかけ、遠心力と体の回転を活かせる |
得られる効果 | 球速・回転・コントロール・疲労軽減・ケガ予防 |
習得のための考え方 | 脱力・流れ・“振る”より“振られる” |
正しいやり方 | 1.ラケットを立てる → 2.前腕を回外 → 3.引っ張られる → 4.反動で振る |
練習法 | 脱力素振り、壁打ち、3拍子ドリル、目隠し素振りなど |
スイングの極意 | 「自然な流れに乗ること」=それが“球が走る”正体 |
ラケットダウンがスムーズにできるようになると、
フォームが綺麗になり、球も伸び、見た目もプレーもどんどん上達していきますよ!
ぜひ、本記事の練習法やコツを取り入れて、日々の練習に活かしてみてくださいね!
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